がんばっていきまっしょい
あれこれとがん治療について思いを巡らせていたのには理由がある。中学時代からの友人が、がん治療のために入院することになったからだ。比較的予後の良いがんなので、本人の表情は明るい。しかし、これからがん治療を開始するという人間が、何の不安も感じないということはないだろう。気の強い彼のことだから、がん治療に対する不安や心配を、ぐっと飲み込んで明るく振る舞っているのに違いないのだ。
本当は良くないのだろうが、がん治療のために入院するちょっと前に、彼と飲みに行った。「がん治療が始まれば、もう酒も飲めなくなるからな」と彼は笑って言った。会社の健康診断がきっかけでがんが発見され、あれよあれよという間に事が進んだという。いざ、がん治療をするとなると、休職中の仕事の引継ぎやら、家に残すペットの世話やら、何やかやとあるらしい。はあ〜、がん治療とはそんな事にも気を配らなくてはならないのか。そうつぶやいた私に、彼は自分のがん治療について、主治医から聞いた話を詳細に聞かせてくれた。おそらく、誰かにがん治療について話すことで、自分の心の内側を整理したかったのだと思う。2時間ほど居酒屋にいて、気がつけばほとんど私だけが飲んでいた。彼はもうすっかりがん治療に向けて覚悟ができているふうなのだった。
いつも潔い彼のことだから、がん治療のために手術室へ向かうときにもVサインなど掲げながら行きそうだ。がんばっていきまっしょい! なんとなく、彼のがん治療を見届けてやろうという気になっている私は、手術の当日、病院にいてやろうと決めたのだった。